ヒット曲で振り返る aiko楽曲紹介

aikoの名前をシーンに知らしめるきっかけとなり、以降も代表作として高い人気を誇る1曲。誰しもが抱いたことのあるであろう普遍的な感情を、ほかの誰とも違った独自の視点で切なく描いていく、彼女ならではのセンスはすでにこの時点で完成されていて、リリースから20年以上経った今も色褪せることがない。2003年にはテレビアニメ「まっすぐにいこう。」のエンディングテーマに使用された。同アニメとは縁が深く、「どろぼう」や当時メジャーではリリースされていなかった「れんげ畑」も使われ、ファンから大きな注目を集めた。

テレビドラマ「さよなら、小津先生」エンディングテーマとなっていたバラード。aiko初のドラマタイアップ曲ということもあり、毎週欠かさず放送をチェックしていたファンは、この曲を聴くと田村正和演じる小津先生の顔がやんわりと脳裏をかすめるだろう。イントロの泣きのギターで曲の世界へと一瞬で誘い、抑えていた感情をサビに向けて徐々に開放していくボーカルが美しく起伏していく。間奏開けの「今も好きだよ」は何度聴いてもグッとくるし、離れた恋人に対して告げられる“最後のおやすみ”が圧倒的に切なすぎる。

「ま、私も成長したということで」というセリフが印象深い、本人初出演によるグリコ「カフェオーレ」のCMで使用されていたナンバー。両目共に2.0を誇る彼女の視力に若干の陰りが見えてきたという実際の体験をもとに、物理的なものだけではなく、目には見えない心の動きも含めて“大事なものを見落としてしまうのではないか”という不安がリアルにつづられている。そんな切ない歌詞をバラードに仕立てなかったところが彼女の大きなこだわりだと言う。2コーラス目のサビ前に設けられた“タメ”がもう素敵すぎてシビれる。

軽快なピアノが印象的なサウンドに、大切な人に対するまっすぐな思いを乗せたアップテンポナンバー。ボート部の奮闘を描いたテレビドラマ「がんばっていきまっしょい」の主題歌となっていた。“あたし”の感情を描いた歌詞は聴き手を直接的に鼓舞する内容ではないが、聴いていると確実に心が前を向いて踊り出し、文字通り“キラキラ”した景色が見えてくるのが不思議。ライブでも鉄板の盛り上がりが約束された1曲。しかし、2コーラス目のBメロにおける主メロ裏で楽しそうに舞い踊るフェイクは音源ならではの聴きどころと言える。

2005年開催のライブ会場内で初めて流され、その後に花王「ハミング」のCMソングに決定、翌2006年リリースのアルバム「彼女」に収録されるという異例の流れで世に広まった1曲。2006年の「NHK紅白歌合戦」での感動的な歌唱を記憶している人も多いかもしれない。友人の出産をきっかけに作られた楽曲だけあり、生まれくる新たな生命への思いと、生きていく中で出会うであろう愛について歌われている。言葉を噛み締めながら歌うaikoの滋味深いボーカルは、聴き手が年齢を重ねるごとに新たなメッセージを伝えてくれる。

大ヒット映画「花より男子F」の挿入歌であり、aikoのシングル表題曲としては初の英語表記タイトルとなったバラード。トライアングルの切ない音色で幕を開け、次第に熱を帯びていくドラマチックなサウンドに、息づかいさえも感じさせる繊細で情感に満ちた歌声が乗せられている。“ゆらーゆらー”と空耳させる「You Love You Love」のフレーズが「I Love」へとつながっていくエンディングが感動を呼ぶ。夏の日に髪の毛が風にさらわれた瞬間、この曲のサビの歌詞にある「夏髪が頬を切る」を想起する人はかなりのaiko通。

メジャーデビュー11年目にして初のシングルチャート1位を獲得した記念すべき1曲。裏打ちを用いたリズム、ふんわりとした独特な譜割りを持つBメロ、疾走するサビに乗せられた新しいタイプのメロディと、当時それまでのaikoにはなかった斬新な表情をリスナーに突き付けることとなった。曲に秘められたパワーは心地よい爪痕を確実に残し、いつしかライブでのキラーチューンへと育っていくことに。「ブリヂストン・アルベルト」のCMソングとして、志田未来が自転車で駆け抜ける映像にぴったりと寄り添っていたのも懐かしい。

テレビドラマ「素敵な選TAXI」の主題歌。通常、タイアップが付いていても作品の詳細を意識せず楽曲制作をするaikoだが、この曲はドラマを意識して書き上げたという。そのためドラマの内容にリンクしたフレーズが歌詞に盛り込まれることになった。アレンジャーにOSTER projectを初めて迎えたことで新たな聴き心地のピアノロックへと仕上がり、今やライブには欠かせない超重要ナンバーの1つとなっている。ちなみに同ドラマの第8話には、aikoに間違えられる洋服屋店員・沼越宏美役でaiko本人が出演している。

アニメ映画「映画 聲の形」の主題歌。原作マンガのファンであったaikoが、主題歌の担当決定に大きな喜びを語っていたのも記憶に新しい。構成的にはAメロ、Bメロ、サビという流れを持ちつつも、すべてのパートがそれぞれに強く切ない彩度を放ちながら1つのストーリーを描き出していき、タイトルフレーズを含む大サビへとドラマチックに収束していく展開が素晴らしい。言葉を交わさずとも強い思いを伝え合う曲中の“2人”は、「聲の形」のストーリーにもシンクロしながら、深く大きな愛の形をしっかりと伝えてくれる。

「君にいいことがあるように 今日は赤いストローさしてあげる」――このシンプルでストレートな歌詞のリフレインがこれほどまでに人々の心を揺り動かし、日々を楽しく生きる上でのパワーになってしまうのか！ そんなことをまざまざと証明してくれた痛快なアップナンバー。デビュー以来、その歌詞の独自性でファンをトリコにしてきた彼女は、ここにきてさらなる進化を遂げたように思う。人懐っこい笑顔が浮かぶボーカリゼーションも素敵だ。2018年4月には「王様のブランチ」のテーマソングとして、土曜のお昼を鮮やかに彩った。